子宮内膜症の診断は、前述の症状とともに超音波検査で比較的容易にできます。
超音波検査にて、子宮の特徴的な腫大像や病巣像、ならびに卵巣の腫大像と内容物の貯留が確認できればほぼ診断は確実です。
超音波検査
超音波検査は非常に簡便にでき、また経膣超音波検査にて、子宮や卵巣の状態を正確に判断できます。
子宮内膜症性嚢腫(チョコレート嚢腫)は肥厚した壁を有した嚢胞性腫瘤を認め、多くは単房性ですが多房性のこともあります。
画像診断上の特徴は
1.辺縁不整
2.周囲組織との境界不明瞭
3.周囲臓器との癒着
4.びまん性で均一な内部エコー
内容は微細な点状エコーとして描出されることが多く、出血を繰り返す症例では嚢胞内に凝血塊の像が認められることもあります。
子宮腺筋症では境界不鮮明で子宮筋の肥厚が認められることが多く、境界明瞭な子宮筋腫とは異なった画像を呈することが多いのです。
MRI(magnetic resonance imaging:核磁気共鳴画像)
MRIは、その検査の性格上子宮腺筋症の病巣部や子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)の内部の質的診断(貯留している液体が水のようなものなのか血液成分が混じっているのかなど)もできるため診断などにおいて多用されています。
子宮内膜症性嚢胞では、
・T1強調画像で高信号
・T2強調画像で高信号か低信号
を呈する。
腹腔鏡検査
おへそのところから内視鏡を入れてお腹の中を観察する検査を腹腔鏡検査と言います。直接お腹の中をみれますので、その所見によって診断したり、また進行度を決めたりすることができますし、治療も同時に行うことができますので非常に便利です。
現在では、revised AFS(the American Fertility Society:アメリカ不妊学会)の分類にて、子宮内膜症の部位を腹膜、左右の卵巣、卵管に分けて記載し、さらに子宮内膜症病巣そのものの程度、ダグラス窩の状態、そして癒着の3つの視点に区別し、評価はスコア化され、総合得点にてStage
IからIVまで4段会に分類されています。
ただ、検査というものの手術室での操作になりますし、お腹を膨らます場合にはガスを使用するため副作用のリスクもあります。
薬物療法
子宮内膜症はその進行機序が女性ホルモンの制御を受けていることから、ホルモン療法が長く用いられています。
1.偽妊娠療法
妊娠・分娩において子宮内膜症病巣部が脱落膜化して萎縮してゆくことから、おなじようなホルモン環境を作るためにいわゆる経口避妊薬(oral contraceptives
: OC)が用いられています。この方法では、子宮内膜症の述語の再発予防にも有用です。
内服には
(i)周期的投与法・・・経口避妊薬を月経周期5日目から21日間投与
(ii)持続投与法・・・経口避妊薬を月経周期5日目から持続的に投与
などがあります。
2.プロゲストーゲン療法
プロゲストーゲンは排卵周期をなくし、また子宮内膜に対する萎縮作用などがあるために用いられますが、単独投与では吐き気や乳房緊満感やむくみが出現してくるためコンプライイアンアスは悪いです。
3.低用量ピル
現在経口避妊薬は1999年に承認された低用量ピルが広く出回っています。現在までに子宮内膜症の患者様への投与によって症状の緩和や月経血量の減少が報告されてきています。
4.GnRHa療法(偽閉経療法)
GnRHa(ゴナドトロピン放出ホルモン作動薬)を使用して、下垂体受容体を連続的に刺激し、そのためゴナドトロピンの律動的分泌を抑制してしまい、その結果卵巣機能の抑制、エストロゲンの産生抑制を起こします。この低エストロゲン環境で子宮内膜症病巣部は閉経時期に起こるのと同じように萎縮・退行すると考えられています。
ただし、更年期様症状の出現、半年の治療期間、休薬期間は半年以上となっています。それは、長期間にわたり使用することで骨塩の低下が起こり骨粗しょう症になりうる可能性があるからなのです。
5.NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)
対症療法としての投与となります。
手術療法
手術療法には、病巣のみの除去で妊孕能を温存する保存手術と、子宮・卵巣を摘出する根治手術があります。
1.腹腔鏡手術
腹腔鏡をお腹のなかに挿入し、病巣を除去する手術です。
生殖機能が維持できること、手術侵襲が少なく入院期間が短いなどの利点があります。
2.開腹保存手術
下腹部に10cmから15cm切開を入れ、病巣を除去する手術です。
病変が腹腔鏡では処理できないほどの大きさであったり癒着がひどい場合などに行います。生殖機能は保たれますが、入院は腹腔鏡手術よりは長くなります。
3.準根治手術
開腹して卵巣の一部を残しあとは子宮とともに摘出します。
4.根治手術
深部病変があったりした場合には、開腹し、卵巣と子宮を全摘出します。
メンタルヘルスケア
子宮内膜症に罹患している女性は5~10%といわれています。子宮内膜症は最近ではほとんどの方がご存知ですが、その反面自分がそうであるとはなかなかわからずに月経困難症で社会生活に支障をきたしたり生活の質(QOL)が低下したりして、精神的に負担を受けることはあまり知られていません。
そのためには、もっと積極的にメンタルケア、セルフケアのサポートが必要です。
以前より月経困難症や過多月経があった患者様が、他院では原因に対してなにも説明をうけなかったが、当院を受診し超音波検査で子宮腺筋症をしてきされ、月経困難症や過多月経の原因が分かってから、生理痛も少し楽になったと言われていました。原因が分からず、不安な状態のまま生活していたため、原因が分かって気分的に落ち着いたそうです。
女性のいろいろな症状は、その精神状態によっても大きく変わっていくものなのです。
ですから、ひとりで悩まずに、お気軽に当クリニックへお立ち寄りください。