多嚢胞性卵巣症候群の病態
多嚢胞性卵巣症候群とは、臨床症状(月経異常・不妊・多毛・肥満など)、内分泌異常(血中LH/FSH比の高値、多嚢胞性卵巣(多数の卵胞の嚢胞状変化)を主徴とする一群の病態を言います。
この病態は、卵巣の表面が肥厚したため排卵が行われず、成熟卵胞によって卵巣が多嚢胞化しているものです。また、肥満によってインスリン抵抗性物質が分泌されるために、LHが高値になります。
多嚢胞性卵巣症候群の診断
診断基準は
I. 臨床症状
(1)月経異常(無月経・希発月経・無排卵性周期症など)
2男性化(多毛・低声音・陰核肥大)
3肥満
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4不妊
II.内分泌検査所見
(1)LHの基礎分泌高値、FSHは正常範囲
2LHRH負荷試験に対し、LHは過剰反応、FSHはほぼ正常反応
3エストロン/エストラジオール比の高値
4血中テストステロンまたは血中アンドロステンジオンの高値
III.卵巣の所見
(1)超音波検査で多数の卵胞の嚢胞状変化が認められる
2内診または超音波検査で卵巣の腫大が認められる
3開腹または腹腔鏡で卵巣の白膜の腫大や表面隆起が認められる
4組織検査で内夾膜細胞の肥厚・増殖・および間質細胞の増生が認められる
以上の各項目のうち()印をつけた項目を必須項目として、それらすべてを満たす場合を多嚢胞性卵巣症候群とする。
多嚢胞性卵巣症候群の治療
I.ホルモン療法
1.クロミフェン療法
1.クロミフェン単独投与
2.多剤併用(hCG、プレドニゾロン、ブロもクリプチン)
2.ゴナドトロピン療法
1.hMG-hCG
2.pure FSH-hCG
3.GnRHアゴニスト製剤+ゴナドトロピン
II.手術療法(開腹または腹腔鏡下)
1.卵巣楔状切除術
2.卵巣焼灼術
まず試みられるクロミフェン療法での排卵率は約50%、妊娠率10%程度である。
クロミフェンとは、製品名がクロミッドといい排卵誘発剤である。
また、漢方では温経湯が多嚢胞性卵巣症候群の葉に欄障害の第一選択薬である。
原則的には外科的治療はホルモン療法が無効な場合が適応になります。
開腹による卵巣楔状切除術が従来より行われ、80%以上の高い排卵率が得られていますが、最近では、腹腔鏡下で卵巣焼灼術が普及している。
無月経の原因・病態
無月経の原因としては、
・卵巣の働きが悪く排卵ができない状態になっている
・卵巣を支配している脳下垂体からの性腺刺激ホルモン、特に黄体形成ホルモン(LH)の律動的分泌の乱れ
・脳下垂体を支配する視床下部の働きの低下(視床下部性)
などがあります。
思春期での続発性無月経の原因としては、ストレスやダイエット、激しい運動などによる視床下部性無月経が多いとされています.
無月経の診断
最初に、基礎体温やホルモン検査による評価をすすめます。
また、超音波検査で子宮や卵巣の器質的異常がないかを検索することも重要です。
診断の手順としては
☆プロゲステロンの単独投与にて消退出血が起こった場合を
第I度無月経といい、エストロゲンの子宮内膜に対する作用がある状態と評価します。
☆プロゲステロンの単独投与では消退出血が起こらなかった場合に、プロゲステロンとエストロゲンを投与して消退出血が起こった場合を
第II度無月経といい、エストロゲンの子宮内膜に対する作用がない状態をいいます。
☆それでも消退出血が起こらなかった場合を
子宮性無月経といいます。
無月経の治療
第I度無月経の場合は、プロゲステロン製剤を内服することで対応してゆきます。
第II度無月経の場合には、プロゲステロンとエストロゲンを周期的に投与して消退出血をおこす治療(Kaufmann療法)を繰り返してゆきます。
この場合、長期間の投与ではなく、3~4ヶ月の治療期間後、休薬期間をおいて評価をしてゆきます.
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