不妊相談
女性の晩婚化・社会進出によるストレスなどで女性の体を取り巻く環境は大きく変化してきおています。
特に、卵巣機能は大きく影響を受け月経不順・無排卵・不正性器出血そして不妊症のカップルの増加。
初めて子供を産む平均年齢が上がるにつれて妊娠・出産での異常の発生頻度上昇など、妊娠・出産を望むカップルには大きな問題です。
10組に1組は不妊のカップルと言われるなか、できるだけ身体に負担をかけないように漢方を主体に不妊治療を進めてまいります。
当クリニックでは、BBTを基本にタイミングを合わせて妊娠を期待する方法から、人工授精までを行っております。
体外受精・顕微授精については、その方に最適な医療機関を責任を持って紹介いたしますのでご安心ください。
不妊症についての一般的な説明は、女性健康医学講座にも説明しておりますので参考にしてください
不妊治療における検査・治療
当クリニックは不妊専門クリニックではないため、設備の関係上、体外受精は実施しておりません。ご不便をおかけいたしますが何卒ご理解いただけたらと存じます。
当院での主な治療に関しては
・基礎体温の測定
・卵巣の機能を評価するためのホルモン採血
・卵巣機能に影響を及ぼす可能性のある甲状腺の機能を評価するためのホルモン採血
・漢方薬やホルモン剤、排卵誘発剤の使用にて、排卵を促す
・超音波検査にて卵胞の発育を観察し排卵のタイミングを調べる
・頚管粘液検査(フーナーテスト)
・精液検査
などが主な診療・治療内容です。
頚管粘液検査(フーナーテスト)
性交後検査ともいわれ、あらかじめ3-4日間禁欲していただき、基礎体温表(BBT)や頚管粘液の性状・経腟超音波検査での卵胞計測にて推定排卵日に性交を指示。
検査は性交後3-4時間以内に実施します。
頚管粘液を採取し、運動精子数を顕微鏡にて確認します。一定の基準はありませんが、頚管内に運動精子が10-15個以上あれば陽性と判定します。
精液検査
また、男性側の不妊要因も40%ありと言われていることから、精子の数や運動率を測定するための専用の
精液カウンターを設置しております。)
この検査は、男性に対する検査のために自費診療となります。
精液検査希望の方は、正しい検査が行われるように実施要領を説明いたしますので、院長に相談してください。
ただし、卵管の通過性を調べるいわゆる「子宮卵管造影検査」に関しては、当院では放射線を使用するため、実施してりません。そして、必要であれば市立伊丹病院や近畿中央病院に紹介させていただいております。
不妊治療(内服治療)
基礎体温や検査結果から、あなたに一番適した治療法を考えてゆきますが、
基本となるのは漢方です。
もちろん、適応があれば西洋薬を使用してゆきます。たとえば、高プロラクチン血症の場合などでは排卵を妨げているプロラクチンを下げる薬を内服していただくようになりますし、子宮発育不全であればカウフマン療法という周期的にホルモン剤を内服してゆき子宮の発育を促す治療を実施してゆきます。
ホルモン剤でも反応しなかった方が、漢方薬を内服して数周期後に生理が発来したこともあります。最初に漢方薬を処方した際には、「ホルモン剤で出血がないのに、漢方なんかで生理が来るはずないのに・・」と思っていたと後で言ってくれました。
診察では、基本的に
基礎体温(BBT)を測定していただくことをお薦めしております。
ただ、基礎体温を測定すること自体がストレスになってしまう方もおられるため、患者様の状態にあわせて治療計画を立てて行きますので、遠慮なく言っていただけたら幸いです。
BBTを正確に評価するためには、少なくとも3周期を診なければなりません。たまたま測定した周期が排卵周期であったり、そうでなかったりと変化があるためです。
また、ホルモン採血をして卵巣からの女性ホルモンの分泌の程度を評価したり、脳(視床下部・下垂体)からの制御がどのようになっているのかを評価してゆきますので、1周期ずつ細かなアドバイスをしてゆきます。
ですから、少しの期間でも結構です、もしBBTを測定しておられましたら、基礎体温表に記述してクリニックに持参してください。そのときから、すぐに治療の方針が立てられます。
基礎体温(BBT)にて低温相と高温相が認められれば、一応排卵はあると思われますが、高温相の状態で期間が短かったり、不安定であったりすると黄体機能不全である可能性が高くなり、折角受精卵が出来ても子宮内に移動し着床している間に受精卵が冷えてしまって分裂ができなくなり、そのまま流産になってしまうこともあります。
このような
高温相が不安定な場合はホルモン剤の内服などで高温相を一定期間維持させてあげるような治療を実施してゆきます。
また基礎体温で1相性、つまり低温相のみで高温相がない場合は排卵がなされていない可能性が高く、その場合は
・当帰芍薬散や温経湯などの体を温め血液の流れを良くする漢方を内服
・排卵を抑制する作用のあるプロラクチンとういホルモンの測定
・卵巣機能に影響を与える甲状腺ホルモンの測定
・排卵誘発剤の使用
など、患者様と相談しながら治療を進めていくことになります。
私が医師になった頃は、体外受精を実施している医療機関は全国で3箇所くらいで、成功率も1%くらいで治療費もかなり高額でした。実際には、正直言って現実的ではないくらいの医療レベルでした。
しかし、今は全然状況が違っており、結構身近なところに不妊専門のクリニックがあり、成功率も40-50%、卵子を採取するための卵胞刺激法も確立されております。
しかし、当時はクロミッドという排卵誘発剤、卵子の発育を促す注射など極限られた治療方法しかありませんでした。
その当時から、排卵誘発剤としてクロミッドを使用してきており、全国の産婦人科医療機関では長年臨床で使用され、その恩恵で妊娠され無事に我が子を手に抱いた女性がたくさんおられます。
最近では、排卵誘発剤の副作用のみがクローズアップされ、
・頚管粘液が減少する
・子宮内膜が薄くなる
などが言われております。
確かに、そういう患者様もおられるのは事実ですが、長年排卵誘発剤を使用してきた経験からでは、最低量の使用量(1日1錠で5日間内服)ではほとんどの人がそのような訴えがないということです。
また、当院では漢方を併用して使用することが多く、当帰芍薬散などには排卵誘発作用も認められており、できる限りこの最低量を維持し、薬の反応性を良くするために漢方などを積極的に併用しております。
不妊の原因としては、以下に示すようにたくさんあります。
頻度としては、卵管因子が30~35%と最も高くなっていますが、男性因子も同じく30~35%あるため、不妊症の原因を検査していく際には、女性とともに男性も調べていかなくてはなりません。
排卵因子(20-30%)
☆ダイエット
☆ストレス
☆(潜在性)高プロラクチン血症
☆多嚢胞性卵巣症候群
ダイエットやストレスによる排卵障害も近年増加傾向にあります。
治療に抵抗性を示したりして治療に難渋する場合もあります。
(潜在性)高プロラクチン血症とは、分娩していないのにプロラクチンというホルモンが分泌され乳汁分泌が起こったり、排卵を抑制してしまう病気です。
このプロラクチンというホルモンは日内変動があり、朝の10時くらいが一番低値となります。典型的な例では深夜になるとプロラクチンが分泌され高値を示し、朝には正常値に戻り昼間の診察では見落とされてしまうことがあります。
この場合を特に潜在性高プロラクチン血症といいます。いずれにしても基礎体温を測定することで排卵の有無を確認すること、またプロラクチンを低下させる薬剤の投与、またプロラクチン産生腫瘍の鑑別などしねければいけないこともあります。
多嚢胞性卵巣症候群については月経異常の項目を参照してくださいね。
卵管因子(30-35%)
☆卵管閉鎖・狭窄
☆卵管周囲癒着
クラミジア感染症の広がりや子宮内膜症の増加により、骨盤腹膜炎の既往のある症例が増加してきています。
そのため、排卵しているにもかかわらず卵管采が卵子を上手に卵管に取り込めなかったり、またせっかく妊娠しても卵管で受精卵が留まってしまい子宮外妊娠になってしまったりします。
今では、子宮・卵管鏡(胃カメラのように細いチューブ) にて卵管の様子を観察しながら癒着剥離するような手術も一般的になってきています。
また、卵管の通過性は通水検査や支給卵管造影検査にて評価することが一般的です。当院では放射線装置がないために近隣の総合病院に紹介させていただいております。
ただ、卵管は通過していれば良いといものではなく卵の輸送という卵管細胞の線毛による重要な役割があるのですが、癒着剥離しても癒着していた部分の線毛運動は廃絶していることがあり、不妊や子宮外妊娠の原因のひとつになってしまいます。
子宮因子(10-15%)
☆子宮奇形
☆子宮発育不全
☆子宮筋腫
☆内膜ポリープ
子宮筋腫により子宮内腔が変形を起こすと、受精卵の着床が妨げられたり、受精卵の発育が妨げられます。
よく患者さまから耳にすることでは、子宮筋腫があっても子宮内腔の変形がない筋腫でさえあたかも不妊症の原因で核出などの手術が必要であると言われている人が多いので、正確な診断が必要です。
また、後の妊娠のことを考えずに子宮筋腫を核出し、子宮を傷だらけにしてしまっているケースもあります。
筋腫がある場合は、その大きさやそのタイプ(粘膜下筋腫・筋層内筋腫・漿膜下筋腫)によってはMRIなどで評価して、手術の際に子宮筋層への手術侵襲を評価してから手術(子宮筋腫核出術)を実施することが望ましいです。
男性因子(35-40%)
☆造精機能障害(精索静脈瘤等)
☆精子成熟・保護障害(副睾丸炎等)
☆精子輸送障害(精管閉塞等)
☆射精障害(インポテンツ等)
当院では、精液検査を実施しております。
自宅にて精液を採取していただき、2時間以内に専用のカウンターにて精子数・運動率・奇形率などを調べます。
男性にとっては、とてもナイーブな検査ですが、男性の睾丸重量が徐々に軽くなってきている病理学的報告もあり、最近では不妊の男性要因が約4割と増えてきていることからすると検査としては簡便なので、気軽に相談してくださいね。
その他の因子
☆頚管因子(頚管粘液産生不全等)
☆膣因子(処女膜閉鎖、膣閉鎖等)
☆免疫因子(抗精子抗体等)
何らかの原因で女性の体内に精子に対する抗体が産生されてしまった場合、子宮や卵管での精子の動きが制限をされてしまい妊娠が成立しにくい状況になります。
不妊の原因としては、前述しましたので、今度は系統だって検査をしてゆき必要があります。
もちろん、女性だけではなく、男性も検査をすすめてゆくように・・・二人で取り組んでいくことが重要です。
排卵因子に関する検査
☆基礎体温測定・・・排卵の有無や黄体機能などが大体評価できます。
☆ホルモン測定(LH, FSH, プロラクチン等)
☆頚管粘液検査・・・排卵期になってくると頚管粘液の量や牽糸性が増します。また頚管粘液を乾燥させるとシダ状の模様が形成されてゆくことから、顕微鏡にて粘液の状態を評価することで排卵の時期を推察してゆきます。
☆超音波検査・・・卵胞の大きさや子宮内膜の厚さなどより排卵日を推定します。
卵管因子に関する検査
☆子宮卵管造影・・・卵管の通過性ならびに周囲の癒着などの推定に子宮内に造影剤を入れてレントゲン撮影をします。
☆通気・通水検査 ・・・子宮卵管造影のように直接画像診断はできませんが、造影剤や放射線をしようしないので簡便に検査できます。ただ、片側の卵管の通過性が悪い場合でも対側に異常なければ検査としては異常なしとなることもあります。
子宮因子に関する検査
☆子宮卵管造影・・・子宮奇形や内腔の変形などがわかります。
☆超音波検査・・・子宮奇形や子宮内膜のホルモンに対する変化がわかります。
その他の因子に関する検査
☆抗精子抗体
☆クラミジア検査
☆性交後試験(フーナーテスト): 子宮の中まで精子が侵入できるかどうかみる検査で、性交後の頚管粘液内の精子の状態を顕微鏡で観察する検査です。
あらかじめ3-4日間禁欲していただき、基礎体温表(BBT)や頚管粘液の性状・経腟超音波検査での卵胞計測にて推定排卵日に性交を指示。
検査は性交後3-4時間以内に実施します。
頚管粘液を採取し、運動精子数を顕微鏡にて確認します。一定の基準はありませんが、頚管内に運動精子が10-15個以上あれば陽性と判定します。
不妊の原因を調べる検査を系統だってしたあと、それらの結果から次に妊娠を目指しての治療が始まります。
当クリニックではタイミング指導から人工授精(AIH)までを実施いたします。体外受精については、それぞれの症例に応じて専門医療機関に責任を持って紹介させていただきます。
タイミング指導
一連の検査で大きな異常がない場合には、基礎体温を元にして、まづタイミング指導を行います。
実際にはあまり知られていませんが、基礎体温での排卵日の定義がそのまま当てはまるのはせいぜい20~30%までで、高温相に上昇している間に排卵したり、高温相になってから排卵したりしています。
卵子の受精能力は1日くらい、精子は3日くらいですから、排卵日えお推定して効率よく妊娠に向かうように指導してゆきます。
排卵誘発剤による治療
排卵障害のある方では、クロミフェン療法といわれる排卵誘発剤を内服することで排卵を促す治療を考慮してゆきます。
この内服治療では、一般的に双胎妊娠になる確率は自然妊娠で双胎妊娠になる確立と大きくは変わらないといわれています。
ただし、それが無効であると注射による治療が行われることがあります。
人工授精(AIH)
排卵日を推定し、排卵日の直前に精液を子宮内に注入します。
この場合は、精液検査で精子の数が少ないとか運動率が悪い症例、またはヒューナーテストで成績が悪かった症例などが適応になります。
体外受精・胚移植(IVF-ET)・顕微授精
当院では実施ができませんので、近隣の不妊症の専門医療機関に紹介させていただきます。